制作現場にお邪魔・よもやま編

カットごとに、セル画や背景など入れる封筒が用意されています。

 『親鸞聖人』のアニメには、やたら動物が出てくるとは思いませんか?
 第1部はそれほど感じませんが、第2部以降は、タヌキやキツネ、野犬など動物登場シーンが多く見られます。
 そういえば、大庭監督はかつて「シートン動物記」というアニメの監督をされたことがあり、相当の動物好きなのでは……。
 そこで監督に聞いてみると、
「別に動物が好きという訳ではありません。ただ、遠い昔の歴史ある内容のものを描くとき、何を持ってその時代のイメージを出すかを考えた時、動物が一番いいのではないかと思ったのです」とのこと。
 なるほど、現代を描くアニメなら、ビル街や行き交うサラリーマンをバックに描くのでしょうけど、『親鸞聖人』の舞台は平安時代から鎌倉時代初期。何をもってその時代の雰囲気を出すかと考えられた時、浮かんだ案が「動物」だったのですね。

撮出しの様子。唯円房のセルですが、目は別 セルだと分かります。

 アニメのセル画を見てみると、ハングル文字をよく見かける。そう、セルの一部は韓国や東南アジアなどに送られて、彩 色されているのです。海を越えて制作がなされているなど、ご存知ない方も多いでしょう。
 最近のテレビアニメなどはデジタル彩色されていますが「親鸞聖人」制作段階では、まだそれは普及していませんでした。
 人件費を安く上げる為、原画までは日本で、動画やセル彩色は海外で、というパターンが多かった時期でした。アニメのエンディングにも「韓一動画」や「HANAPRO」などの名前で出てきますね。
 そういった海外下請けを日本国内の地方で行おうとしたのが「MAC」です。「アニメの仕事をしたい!」と思えば、東京に出るしかなかった。それが富山にいてもできるというのですから、それを喜ぶ人もあるでしょう。大黒社長は、そこらへんに目を付けたとも聞きました。
「MAC」は、東京に主力を置くようになったようですが、本社はあくまで富山県高岡市です。富山市駅前にも一つスタジオがあります。スタジオといっても、セル彩 色の部屋って感じですけどね。
 でもって、MAC自体でアニメを作れるようにと思ったのか、「親鸞聖人」シリーズ制作中にかなりパワーアップを試みたようです。その結果 の一つが、第6部完結編のラストに出てくる「海」のシーンです。御臨末の書が流れるバックの海、あれはCG合成してあり、合成処理を手掛けたのはMACでした。がんばってます!

目セルをのせれば、ご覧の通 り。ちなみに写真は大庭監督の手です。

「制作で、一番うまくいったカットは、どこですか」
大庭監督に聞いてみた。
「韋提希夫人が、釈尊に救いを求めるシーンですね」とのお返事。 つまり、牢屋の中の韋提希夫人が「助けて〜、お釈迦さま〜」と叫び、その叫びが霊寿山のお釈迦さまに届く、というシーン。確かに、迫力あるシーンですね。
 このシーンは「背景動画」という処理がなされています。つまり、背景もセル画にして動かしている訳です。
  普通のカットは、1枚の背景に、人物を描いたセル画を載せて撮影しています。どんなに動きがあるカットでも、例えばアジャセ太子が馬に乗って「はははは」と迫ってくるシーンがありましたが、あの背景も動いているようで1枚の絵で処理されています。
「背景動画」は、文字どおり、1コマ1コマ、背景の動きも描いていかねばならないので大変です。いやー、あのシーンを担当したアニメーターは、さぞかし苦労したことでしょう。
 他にも「背景動画」されているシーンはあります。『王舎城の悲劇』の中では、ビンバシャラ王がお釈迦さまに救いを求めるシーンもそうですね。お釈迦さまのバックにそびえる岩盤が、一部背景動画になっています。このシーン、背景動画から背景画に変わる瞬間、みなさん分かりました?
 他にもあります。捜してみましょう。

「よもやま編」は、次回に続く・・・

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