制作現場にお邪魔・アフレコ編

第6部完結編のアフレコ風景です

『親鸞聖人』のアフレコは、主に東京大久保にある「タバック」にて行われました。ビルの地下1階にある狭いスタジオですが、なにせ台詞が数回しかない人から主役まで何十人と集まる時がありますから、廊下はごったがえします。

音声はすべてデジタル録音されてMOへ

監督曰く「親鸞聖人第5部以降は、キャラクターはみんな歳をとってしまって。こんなアニメは他にはなかなかありませんよ」
なるほど言われてみれば。そんな中、若き女性キャラクターの覚信尼の登場は、まるでアニメの中に可憐に咲いた一輪の華のようだ。
第5部では、かの岩男潤子さんが声を担当している。岩男さんと言えば、元アイドルグループ・セイントフォーの一員で、解散後は声優活動で人気があがり、いまでもソロコンサートは武道館一杯になるそうだ。
だからアフレコの時も、大久保タバックの前にはファンが詰め掛けていた。
おまけに、岩男さんが来るや、スタッフの態度は一変、やけに丁寧になっていた。しかし、可愛くて綺麗な人だなあ。
スタジオ内での岩男さんは、実に礼儀正しく、リテイクの時も、本田監督の方に向き直して「申し訳ありません」と深々と礼をする。うーん、こんな声優、見たことない。人気があるのも、うなずけるなあ。
ところで、第6部の覚信尼は、金月真美さんが担当してます。その違いに気付かれましたか?よく似た声を探してくるのも、音響監督の仕事なのでありましょう。そういえば、第4部で明法房役だった中尾彬さんの代わりに、第5部では郷里大輔さんが担当してましたね。これもよく似た声でした。

奥が平太郎役の中尾さん。中央が唯円房役の鈴木さんです。

シリーズすべて(『王舎城の悲劇』を含めて全7本)に出演しているのは、誰でしょうか。それは鈴木勝美さんただ一人です。
第1部は、にわか坊主役(「そなたもおなごが好きじゃろう」)。第2部は善恵房役。第3部は京都の住人(「そりゃ、目的は人それぞれじゃろう」)。第4部は日野左衛門の友人(「また出せといってきたんだ・・」)。第5・6部では唯円房役。ついでに王舎城の悲劇では、ビンバシャラ王の家臣役でした。あともしかしたら、動物の泣き声役でも出てきてるかもしれない。鈴木さんの得意分野なんですね。
 ここまで起用されるのは訳がある?それは分かりませんが、どうも本田監督のお気に入りなのでは、とういのが私の推測なのですが。それというのも、鈴木さんは非常に明るくて、気のまわしのいい方で、他の声優の番がまわってくると、控室に言って「○○さん、出番ですよ」と、声をかけてくれるのです。おかげでアフレコもスムーズに進むというもの。鈴木さん、ごくろうさまでした。

アフレコマイクです。非常に値段が高いそうです。

 アニメの音声は、映像が出来上がってから声優によって吹き込まれます。これを「アフターレコーディング」、それを略して「アフレコ」といいます。つまり、絵が先行して作られるので、その口パクに合わせて声優が演じることも多い訳です。
 たとえば『親鸞聖人』第4部で、西仏房が「見ての通りの僧侶です。今何か、信心の話をしておられたようだが」と話すカットがあります。ここ、よく聞くと、「僧侶です」と「今何か」の間が、少し狭いように感じます。これは、アフレコ現場で、口パクに合わせて声優が演じたものだからです。
 口パクしているのにセリフが途切れる、というのも、よく見ますね。変に思う人もあるでしょうが、制作上、仕方ない面もあるのです。
「アフレコ」の逆に、声優が先に録音したセリフに合わせて絵を書くやり方もあります。これは、録音セリフに合わせて口パクを合わせるので、登場人物が本当に喋っているように見えて、完成度が高くなります。これを「プレ・スコアリング」略して「プレスコ」と言います。
『親鸞聖人』シリーズでは、プレスコはふんだんに使われています。制作期間の少ないテレビアニメではほとんどなされないので、それだけ手間暇かけて制作されているのが分かりますね。第1部では、親鸞聖人と法然上人とのやりとりのシーンなど。第6部完結編などは、プレスコのオンパレードです。みなさん、分かりました?

京都についた関頭の同行が叫ぶシーン収録中。

 1回のアフレコで動員される声優の人数には限りがあります。その数は、アニメの登場人物の人数よりも、かなり少ない人数です。つまり、一言二言で終わるような脇役セリフは、一人の声優が脇役何人分かを担当することになるのです。
  細かい配役は、アフレコ台本によってあらかじめ決められていますが、アフレコの現場で即興で決まることもあります。
  では、『世界の光・親鸞聖人』では、どのようになっているのでしょうか。
  たとえば、『第1部』では、慈鎮和尚を麦人さんがされていますが、平家の落ち武者の一人も麦人さんが演じています。3人のうちの、誰だったでしょう?
『第4部』では、弁円の手下の弁海役を さんが演じていますが、同じく第4部で冒頭の天命真教の教祖をやっていますね。
『ガヤ』といわれるシーンなどは、声優が総出で行います。つまり、町の雑踏や、大勢の参詣者のざわめきなど。第1部の「はな、いらんかえ〜」は、声優による全くのアドリブで、本田監督も大ウケだったそうです。 ……と、まあこんな感じです。
  参考までに、第5部の配役表を、特別サービスでお見せしちゃいましょう。どうです?おもしろいでしょう。
  ついでに書きますが、第4部に出てくる堕落坊主、覚えていますか? 日野左衛門がのぞいた寺で女と戯れているあの坊主ですが、あれは飯塚昭三さんが演じています。エンドロールに出てきませんけどね。飯塚昭三さんは、第3部では上皇役をしていますが、第4部ではあの笑い声をする為だけに、アフレコ現場にこられたのですね。いやはや、ごくろうさまでした。
  さらについでに書きますが、第4部で覚信尼の少女時代を演じている佐々木未来さんは、実際にこの時小学生。子役は女性声優が演じるのが普通なんですが、第4部は本当に女の子を使った、いわゆる凝った作りな訳です。

「王舎城の悲劇」のアフレコ風景です。手前は本田監督の頭。
右が韋提希役の弥永さん。中央がビンバシャラ王役の小倉さんです。

 いやはや、『親鸞聖人』第4部の声優陣は、なんとも豪華です。そもそも声優よりも役者起用のアニメなんて、そうないです。(ジブリ作品とかぐらいか?)
 親鸞聖人役の高橋幸治は、NHK大河ドラマ「太閤記」で国民的ヒーローになり、あまりの人気に、本能寺の変が2週間遅れたと聞きます。
 特別出演の名役者、山村聰氏も、なぜ出演してくれたのかいまだに謎ですねー。山村氏は老体むち打っての出演。杖をついた姿は、なんとも痛ましい印象を受けました。
 さて、弁円役の中尾彬氏は、最近バラエティー番組での出演が多いので、おじさんイメージが定着してきましたが、第4部アフレコ時は「ヤクザ」というにふさわしいなりでありました。
 中尾氏の起用が決まった時、どんな人だろうかと調べたところ「極道の妻たちへ」などヤクザ者の映画ばかりの出演。組長など、借金取り立て役など、恐怖の役ばかり。付き人を連れてアロハシャツでタバックに登場した時は、 まさに「ヤクザが来た〜!」という感じでした。
 中尾氏はこの時、アニメ声優は初めての体験ということでしたが、なんでなんで、ラッシュフィルムの口パクに見事ピッタリ合わせ、本田監督も「中尾さん、アフレコの経験があるんじゃないか?すごく上手だ」と驚きの様子。親鸞聖人役の高橋氏と、息をあわせての熱演でした。
 ところで、弁円の弟子の弁長役の森山潤久氏を、知っていますか? 森山氏も役者なのですが、映画デビュー作は何と「親鸞・白い道」(三国連太郎監督)での親鸞聖人役でした。 アフレコでは、どーも不調だったようですが、それはかつての親鸞聖人役が弁円の弟子役になってしまったひがみからだったのでしょうか(笑)

 

「制作現場にお邪魔」は、次回に続く・・・

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