大庭秀昭監督に直撃インタビュー

以下は、『親鸞聖人と王舎城の悲劇』制作中の平成8年夏にインタビューさせていただいたものです。

どちらのご出身ですか。
福岡県福岡市です。

多忙とお聞きしますが、趣味を楽しまれる時間などあるのでしょうか。
仕事が趣味のようになっています。仕事と関係なく楽しもうとしても、読書も映画鑑賞も、結局は仕事と結び付けて考えていることが多いです。仕事と無関係な趣味は、ドライブぐらいでしょうか。

アニメ制作に携わられたきっかけは何ですか。
実は、マンガを描いていた時期があるのです。出版社の研究生になったり・・・。

研究生とは、どんなことをするのですか。
プロになるための予備段階ですね。出版社の編集の人が、マンツーマンで作品創りを教えてくれます。ところが、私の場合、伸び悩んだ時期にちょうど、アニメーションの現場に触れまして、こちらの方が私の志向に合っていると思ったのです。

どういう志向でしょう。
マンガは、自分でキャラクターを描いて、背景も描いて、仕上げもしてと、とても時間がかかります。アニメも、時間もお金もかかりますが、共同作業ですから、自分の趣味あるパートに取り組めるのです。私は、絵を描くよりは、話を創ったり、演出したりする方が好きでした。それぞれ向き不向きがあるでしょうが、私は、監督が一番適していたのです。

仕事について、どのような夢をお持ちですか。
自分のオリジナルの話を創るのが夢ですね。

具体的には、どのような作品を。
それは秘密です。これから脚本を書いてゆきます。

作業中の大庭監督

親鸞聖人のアニメシリーズを作られる以前に抱いておられた、仏教のイメージはどんなものでしたか。
宗教に関心がないわけではありませんでした。中学から、キリスト教の学校に通 っていましたので、宗教に触れる機会は多かったのです。毎朝、礼拝があり、聖書の一部を暗唱させられましたが、キリスト教そのものよりは、イエスの生涯とか、聖書の物語に興味を持ちました。
仏教も、教えそのものより、お釈迦さまのご一生とか、さとりに到達されるまでの過程に関心がありました。

最初に、「親鸞聖人のアニメ」制作の話があったときは、どう思われましたか。
やる以上は、自分なりのものを作ろうと思いました。
シナリオを受け取り、仕事を進めてゆくと、親鸞聖人のご生涯そのものに引かれるようになりました。吉川英治の『親鸞』を読み、「人間としておもしろい。ただのお坊さんじゃないな」と思いました。実際に、波瀾に富んだ人生を送っておられますし。特定の宗派の開祖というだけでなく、人間的な魅力を感じました。

親鸞聖人シリーズで、特に印象に残っているシーンはどこですか。
こういう仕事を継続してゆくと、少し前の仕事をどんどん忘れてしまうものです。4部に没頭していると、3部は忘れるとか。けれども、1部のことはよく思い浮かびます。比叡山で修業中の親鸞聖人が、女性と会話をされるシーンが印象に残っています。

第4部はどうですか。
最近、4部の予告編を作ったのですが、親鸞聖人よりも、脇役がいいところを持っていってしまって・・・。4部の中では、どちらかというと親鸞聖人は受け手側に回っておられます。石を枕に雪の中に横たわられるところは印象的ですが、映像の上では受け身です。弁円が稲田に乗り込んだところでも、あくまでも静かに受け取られた。『じれったいなあ』と思われたりして、ご期待にそえなかったかもしれません。

そんなことはありません。感動的に見せていただきました。
始まりはどうしようか、とか、終りの部分をどうしようかと悩みます。4部の出だしは、親鸞聖人のご一行がシルエット風に登場される。また、終りは平太郎との別 れのシーンで、もっとも印象に残っています。

絵コンテは一人で考えられるのですか、何人かで話し合って決まるのですか。
一人で考えます。その後で、制作委員会の皆さんや、プロデューサーの大黒さんの意見をお聞きして、改めて煮詰めてゆきます。

じっと考えておられたら出てくるのですか。
とにかく机の前に座って、ペンを握ることです。描かないと始まりませんから。
『親鸞聖人と王舎城の悲劇』では、五百枚近くの絵コンテになりました。あまり好きな言葉ではありませんが、『千里の道も一歩から』『継続は力なり』でs。
途中でも、うまくいったかなと思うところはあります。3部の住蓮房・安楽房が首をはねられるシーンとか、鈴虫・松虫の踊りとか。

タイムシートにあわせてセル画のチェック

『親鸞聖人と王舎城の悲劇』で、これはいいシーンと太鼓判なのはどこでしょうか。
見せ場は、これまでにも増して多いです。絵で表すと、おもしろいシーンはいくつかあります。

一箇所あげていただくと。
韋提希夫人がお釈迦さまに救いを求めるところです。心の叫びがお釈迦さまに届くところをどう絵であらわすか、演出家としてやりがいを感じました。また悲劇でsので、見ている皆さんもズンズン沈んでゆきそうな感じで、それを一気に解放してあげる場面 の必要を感じたのです。

親鸞聖人ファンの皆さんに、メッセージを。
仏教の教義を教えているのですが、作品である以上は、物語としても楽しめるようにと作っています。
作っている以上は、ひとりでも多くの人にと思いますので、仏法を求めている人だけでなく、まったく知らない人でも、おもしろく見られるものをと思います。

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